静かな光に包まれる、熊本の朝焼け旅へ
――地元の人だけが知っている、とっておきの“朝”の風景
まだ街が眠っているころ、熊本の山々や海辺では、静かに、でも確かに、朝が始まっています。
観光地の喧騒とは無縁の場所で、ただ自分と自然だけが向き合う時間。
そんな、地元の人がそっと教えてくれた「秘密の朝焼けスポット」をご紹介します。
阿蘇の外輪山を越えて南阿蘇へ向かう途中、俵山峠のカーブを抜けると、空がじわじわと朱に染まり始めます。
夜の残り香が漂う空気の中、峠の展望所に車を停めて深呼吸。
目の前には、雲海の彼方から顔を出す朝日と、それを静かに見守る阿蘇五岳のシルエット。
風が少し冷たくて、でもその冷たささえも心をスッと整えてくれる、そんな時間が流れています。
熊本の山間部、山都町の矢部越では、峠道を走っている最中に、突然視界が開ける瞬間があります。
まるで額縁に入ったような山の切れ目から、光が差し込む。
そこに展望台も標識もありません。ただ、早朝にその道を知っている人だけが、ハンドルを少し止めてその景色を味わいます。
もっと静けさを求めるなら、宇城市三角町の中原水源地公園へ。
池と松林に囲まれた小さな公園には、誰もいません。
水面はピクリともせず、朝焼けがそのまま鏡のように映ります。
カメラもスマホもいらない。
ここでは、ただ「きれいだな」と思う気持ちだけで充分です。
西原村の「風の里公園」は、旧俵山交流館「萌の里」の奥にある丘の上。
車でぐんぐんと登っていくと、牧草地がぽっかりと広がり、その向こうに外輪山と阿蘇谷のパノラマが現れます。
地元の人たちは、キャンプの朝や仕事前のひとときに、ここに立ち寄っては朝日を見て深呼吸していくそうです。
晴れた日は、遠くに由布岳まで見えることもあるのだとか。
海が見たい朝は、上天草市の高舞登山(たかぶとやま)へ向かいましょう。
天草五橋を上から望むこの展望台、昼間は人も多いけれど、夜明けの時間は別世界。
島影が浮かぶ海の上を、ゆっくりと朝の光が横切っていくさまは、まさに“静かなる絶景”。
展望台にいるのは、釣り人と、ドライブ好きのごくわずかな人たちだけ。
早起きがくれたもの
朝焼けを見ていると、不思議と余計なことを考えなくなります。
自然の中に立つと、どんなに忙しい日も「大丈夫」と思える自分がいる。
そんな風景に出会えた日は、きっとその日一日、ちょっとだけ優しくなれるはずです。
「誰にも教えたくない」
けれど「誰かと共有したくなる」
熊本には、そんな朝の絶景がまだまだ眠っています。